あなたが毎日何気なく飲んでいるコーヒーを、生産者の人達がどういう環境で作っているか考えたことがありますか?
世界中の人が日常的にコーヒーを飲むようになり、コーヒー生産者の生活はどれほど潤っているかと思いきや、実はそんなことはないんです。
コーヒーがあまりにも安く取引されてしまって、コーヒーを生産している国では、環境破壊が進んでいたり、コーヒー生産者の生活は不安定で困窮していたりと、様々な問題を抱えているんです。
こうした問題を放置しておけば、どんどんコーヒーの質は落ちていき、生活が苦しくなった生産者の多くがコーヒー作りをやめかねない状況です。
このコーヒー産業の危機を打開すべく出てきたのが、「サスティナブルコーヒー」です。
この状況をどうにかしなければ、生産者にとっても消費者にとっても、そして自然環境にとっても良いことなしですからね。
この記事では、「サスティナブルコーヒー」ではどういった取り組みがされているのかについて、見ていきたいと思います。
サスティナブルコーヒーとは
サスティナブルコーヒーは「持続可能なコーヒー」という意味で、長期的な視点にたって自然保護とコーヒー生産の共存を目指したコーヒーのことです。
サスティナブルコーヒーを推進する団体は、自然を守りながら、生産者が安定してコーヒーを作れる環境を整えようと、様々な取り組みを行っています。
サスティナブルコーヒーを支援するアプローチの仕方としては、大きく3つに分かれます。
- 土壌や水質を汚染しないコーヒー作りを目指した「オーガニックコーヒー」
- 適正な価格での取引と生産者の生活水準向上を目指した「フェアトレードコーヒー」
- 森林保護と生態系の維持を目指した「シェードツリーコーヒー」
各団体は、独自の視点で基準を設け、その基準をクリアしてもらうために、生産者に対して時にはアドバイスや手助けをすることもあります。
基準をクリアしたら、その団体から「認証コーヒー」としてお墨付きが与えられて認証のマークを商品に表示することができます。
このお墨付きの証である認証マークがついていれば、販売する上で一種のブランドにもなります。
消費者が認証マークのついている商品を買うことで、こうした取り組みを支援することにもなりますよ。
では、代表的な認証コーヒーについて、具体的に見てきましょう。
オーガニックコーヒー(有機コーヒー)
「オーガニックコーヒー」は、環境にも消費者にもやさしい、農薬や化学肥料を使わない有機栽培で作られたコーヒーです。
日本では、農林水産省が定めたJAS規格(日本農林規格/Japanese Agricultural Standards)を満たしたものだけが「有機JASマーク」を貼ることができ、「有機」や「オーガニック」の表示を使うことができます。
有機JAS規格では、収穫前3年以上の間、禁止されている農薬や化学肥料を使っていない農園で栽培されたコーヒー豆であることが基準として定められています。
この認証を受けたコーヒーは、小川珈琲、イオンなどで取り扱いがあります。
フェアトレードコーヒー
「フェアトレードコーヒー」は、生産者の生活を改善させるための取り決めが守られたコーヒーです。
コーヒー豆を作っている人の多くは、立場の弱い発展途上国の小規模農家です。
彼らは、自分達で販売する手段もなければ価格交渉することもできないため、まっとうな対価が支払われず不安定でひっぱくした生活を強いられている状態です。
というのも、コーヒー豆はニューヨークやロンドンといった国際市場で価格が決められていて、中間業者に価格の交渉は頼ることになります。
さらには、天候や災害の影響を受けるだけでなくコーヒー豆が投機の対象になっていることで、価格の変動はより激しくかつ複雑になり、翻弄されます。
生産者のこうした状況が問題視されるようになり、1997年に設立した「国際フェアトレードラベル機構」が国際フェアトレード基準を設け、公正で公平な取引が行われることを目指しました。
まず国際市場での価格が暴落することがあっても、購入側が生産者に対して「フェアトレード最低価格」以上の保証をすることで、生産者の生活は安定しコーヒー豆を持続的に生産できるようになります。
さらに、生産者には商品代金に加えて、コーヒー豆1ポンド(約454g)につき「奨励金(プレミアム)」20USセント(約22円)が支払われ、生産地のコミュニティ全体が社会的に発展するために学校や病院を建てたり、井戸を作ったりする資金に充てられます。
また、小規模農家が結束して生産者組合を作り、直接市場と交渉したり、生産力向上のために協力し合うことで自立を促します。
こうして、生産者が一生懸命収穫したコーヒー豆を適正な価格で長期的に取引してもらえれば、次第に生産者の労働環境は改善され、環境にも配慮しながらよりよいものを作ろうという意欲も湧いてくるというわけです。
この認証を受けたコーヒーは、イオンやカルディコーヒーファーム、スターバックスコーヒー、小川珈琲 などで取り扱いがあります。
バードフレンドリーコーヒー
「バードフレンドリーコーヒー」は、渡り鳥を保護するための取り決めが守られたコーヒーです。
かつてのコーヒー栽培は、熱帯の森林を利用しながら木陰で栽培するシェードグロウンが主流で、収穫は手摘みで行われていました。
しかし年々、コストを抑えて収穫量を増やすために、手っ取り早く機械で収穫できる農園づくりへと移行しています。
木陰を作ってくれる森林やシェードツリーは伐採され、太陽光で栽培するサングロウンへとシフトしました。
その影響で、森林に生息し羽を休めていた渡り鳥が、居場所を失い減少してしまったんです。
このことを問題視したスミソニアン渡り鳥センターは、1999年に「バードフレンドリーコーヒー」という認証プログラムを立ち上げました。
このプログラムでは、原生林に近いシェードツリーを活かした木陰栽培で、なおかつ有機栽培している農園を認証します。
とりわけ木陰栽培の認証基準は、とても細かく決められています。
- 農園の40%がシェードツリーで覆われていること。
- 樹の種類が11種類以上あること。
- シェードツリーの20%が15m以上の大木、60%が12m以上の中木、残り20%が小木であること。
認証を受けた農園のコーヒー豆はプレミアムな価格で買い取られ、その収益の一部はスミソニアン渡り鳥センターが世界中の渡り鳥を保護するのに役立てています。
バードフレンドリーコーヒーの認証基準でコーヒー豆を生産することは生産者にとって手間もコストもかかりますが、その分高く買い取ってもらえれば、持続的に生産していくことができますよね。
そして何より、森林を守りながらコーヒーを栽培することで、森林の生態系を守ることにもなり、何も犠牲にすることなく共存していくことができます。
この認証を受けたコーヒーは、カルディコーヒーファーム、小川珈琲 などで取り扱いがあります。
レインフォレスト・アライアンス・コーヒー
「レインフォレスト・アライアンス・コーヒー」は、熱帯雨林を守るための取り決めが守られたコーヒーです。
コーヒー生産者がいかに効率的に収穫量を増やすかを追求した結果、森林を伐採し、農薬や日光を必要とする品種だけを栽培する単一耕作を行うようになりました。
コーヒーノキしか栽培されていないので、それまでと同じ面積でも収穫量は増え、さらに機械で一気に収穫することができるため手摘みと比べて格段に生産性が上がります。
しかしその一方で、それまで守られてきた生態系が大きく崩されてしまいました。
農薬や化学肥料によって土壌や河川は汚染され、森林伐採により野生生物達の生活が脅かされるようになりました。
1987年に設立されたレインフォレスト・アライアンス(熱帯雨林同盟)は、この状況に歯止めをかけるため独自の認証プログラムを立ち上げました。
まずは、コーヒー生産者が生き残るために、自然を破壊しながらコーヒーを栽培していくしかない状況を変えなければなりません。
レインフォレスト・アライアンスは生産者に対して、自然を守りながら生産性を上げる方法を提案しそれを実践してもらうと同時に、農村の医療や教育などの福祉を充実させるために力を貸します。
また、森林や生物の多様性を維持するだけでなく、労働者の生活環境や労働条件を整えることも、認証の条件になっています。
こうして厳しい基準をクリアし認証を取得した後も、引き続き基準が守られているか、毎年監査が行われます。
この認証を受けたコーヒーは、マクドナルド、ローソン(MACHI café)、ヒロコーヒーなどで取り扱いがあります。
まとめ
この記事では、サスティナブルコーヒーと認証コーヒーについて見てきました。
コーヒー産業がよりよい発展をしていくためには、こういった取り組みは必要なんですね。
あなたもサスティナブルコーヒーを見かけたら、ぜひ手にとってみてはいかがでしょう?
特に支援したい団体があれば、その団体の認証コーヒーを探して購入してみるのもいいですよね!
私たち消費者は、認証を受けたコーヒー豆をプレミアムな価格で購入することで、生産者の生活とその地域の生態系を守ることに一役買うことができるんですから♪