コーヒー豆を買いに行くと、ブレンドの中にグアテマラ産のコーヒー豆が含まれているものを見かけることも多いですよね?
でも、グアテマラという国のことすら、いまいちピンとこないのは私だけでしょうか…。
この記事では、グアテマラにおけるコーヒーの位置づけとその特徴について、解説します。
グアテマラの基礎情報
- 国名:グアテマラ共和国
- 首都:グアテマラシティ
- 人口:約1,691万人
- 言語:スペイン語
- 面積:約10万8900㎢(日本の3分の1ほどの面積 北海道+四国より少し広い)
中央アメリカの北部に位置するグアテマラは、コーヒーの産地として有名でコーヒー豆の生産量は世界第9位です。
特に日本とはかかわりが深く、日本におけるコーヒー豆の輸入量では第5位なんですよ。
グアテマラのコーヒー豆は、日本人に愛されているんですね。
グアテマラの主なコーヒー生産地
グアテマラは、3000m級の火山が多く、国土のおよそ7割が山岳地帯の高地です。
そのため、土壌には火山灰が多く含まれていて、適度な寒暖差と十分な降水量のあるコーヒー栽培に適した地域がたくさんあります。
またその一方で、太平洋やカリブ海に挟まれてもいれば湖もあって、北部の平原地帯、中部の高原地帯、南部の太平洋沿岸地帯など、その地域ごとに気候などの環境はさまざまです。
こうした地域ごとの地理的な特性の違いを「微気候(マイクロクライメント)」といいますが、この微気候がコーヒーの味わいにも大きな影響を与えています。
それで、グアテマラのコーヒーの特徴でもあるバラエティー豊かな味わいが生まれるというわけなんです♪
グアテマラでは地域の特性に応じたコーヒー栽培を行っていて、主要な生産地として次の8つの地域が挙げられます。
- アンティグア
- ウエウエテナンゴ
- コバン
- アティトラン
- アカテナンゴ
- サンマルコス
- オリエンテ
- フライハネス
アンティグア
世界遺産にも登録されている古都アンティグアは、グアテマラで最古のコーヒー生産地で標高1500mほどの高原にあります。
周りをアグア、フエゴ、アカテナンゴという3つの火山に囲まれていて、土壌はミネラル分豊富です。
また、湿度は低く乾燥していて日照時間は長いですが、気温は低めで特に夜が涼しいです。
アンティグアのコーヒー豆は、酸味とコクのバランスが取れた味わいで、チョコレートのような風味と華やかな香りが特徴です。
ちなみに、アンティグア産のコーヒー豆は、麻袋に『Genuine Antigua coffee』のマークが入っています。
というのも、アンティグアは世界的に有名な人気のコーヒー生産地なので、『アンティグア』のネームバリューに便乗した偽物が出回っていたためです。
その対抗策として、APCA(アンティグア生産者組合)という組織が2000年に設立され、本物のアンティグア産のコーヒー豆だという証明、お墨付きを与えるようになったんです。
偽物というのは、本当にどこにでも横行しますね…。
ウェウェテナンゴ
ウエウエテナンゴは、グアテマラのコーヒー生産地の中でも最も標高の高い地域です。
標高が2000mほどもある冷え込みの厳しい高地ですが、メキシコから乾燥した暖かい風が吹いてくることで、霜害にあうことなく良質なコーヒー豆を作ることができています。
また、非火山性地帯の起伏が激しい地域で都市部からだいぶ離れているため、農家が精製処理まで行っています。
ウエウエテナンゴのコーヒー豆は、フルーティーな味わいで、上品な酸味と豊かな香りが特徴的です。
コバン
コバンは、熱帯雨林に覆われていて一年中曇りや雨の日が多く、湿気と降水量の多い地域です。
標高1300~1400mの丘陵地帯で気温は低く、5~12月ごろには霧がよく発生します。
また、土壌は石灰岩と粘土質でできています。
コバンのコーヒー豆は、フルーツのような香りとバランスの取れたボディが特徴です。
アティトラン
グアテマラにある火山湖の中で最も大きいアティトラン湖の周辺も、コーヒーの生産に適しています。
アティトラン湖は3つの火山(サン・ペドロ火山、アティトラン火山、トリマン火山)に取り囲まれていて、そうした火山の斜面で主にコーヒーが作られています。
そのため土壌は有機物が非常に豊富で、アティトラン湖上を通って吹いてくる風によってこの土地特有の適度な寒暖と湿度が生まれます。
アティトランのコーヒー豆は、柑橘系の風味とコクの強さが特徴です。
アカテナンゴ
アカテナンゴは、標高が1300~2000mと高く、フエゴ火山の噴火による火山灰で土壌はミネラル分がたっぷり含まれています。
気温が高く乾燥した地域で、シェードツリーを利用したコーヒー作りを行っています。
アカテナンゴのコーヒー豆は、強い酸味に適度にコクはありつつ後味のスッキリした味わいが特徴です。
サンマルコス
サンマルコスは、グアテマラのコーヒー生産地の中で最も気温が高く降水量が多い地域です。
他の地域と比べて雨季が早く訪れるので、コーヒーの花の開花も一番早いです。
サンマルコスのコーヒー豆は、花のような香りとすっきりした酸味、豊かなコクが特徴です。
オリエンテ
オリエンテは、コバンのように雨や曇りの日が多く、降水量が多い地域です。
標高は1300~1700mほどに位置していて、土壌は変成岩を含みミネラル分のバランスがとられています。
オリエンテのコーヒー豆は、チョコレートのような風味としっかりとしたコクが特徴です。
フライハネス
フライハネスは、活火山のパカヤ火山を中心に広がる高地で、土壌は火山灰によってミネラル豊富で水はけがいいのが特徴です。
標高は1400~1800mほどで降水量が多く湿度の変動が大きい地域で、1日の寒暖差もしっかりあります。
乾季の日射量が多いので、収穫したコーヒー豆の天日乾燥がはかどります。
フライハネスのコーヒー豆は、爽やかな酸味と濃厚なコクが特徴です。
コーヒー生産の歴史と特徴
グアテマラでコーヒー豆が生産されるようになったのは、1750年代にイエズス会の修道士がコーヒーの苗木を持ち込んだことが始まりでした。
1860年頃にはコーヒー豆の生産が盛んになりはじめ、1969年には「グアテマラ全国コーヒー協会(通称:ANACAFE/アナカフェ)」が発足しました。
ANACAFEでは、得られた研究結果をもとに農園に対して指導や情報提供を行い、品質向上のための積極的な支援と宣伝を通じてグアテマラのコーヒー産業を支えています。
昔から長いことコーヒー豆の生産を続けている農園も多くありますが、伝統的なやり方を継承しながらも新たな取り組みとしてスペシャルティコーヒーにも力をいれています。
その結果、グアテマラでは、それぞれの農園が独自色の強い個性的なコーヒー豆を生み出しています。
生産方法としては、適度に日光を調整するためのシェードツリーが使われているのが特徴です。
収穫は11~4月にかけて行われていて、精製方法はウォッシュドを採用しています。
精製方法についての詳しい記事はこちらを参考にしてください。
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コーヒーチェリーから生豆を取り出す4つの精製方法を解説します!
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コーヒー豆の栽培品種
グアテマラで栽培されている品種は、ほぼアラビカ種です。
ロブスタ種は数%にすぎず、南西部の低地でわずかに栽培されている程度です。
アラビカ種の中では、主にブルボン、カトゥーラ、カトゥアイ、マラゴジッペ、ティピカ、パカマラなどを栽培しています。
品種についての詳しい記事はこちらを参考にしてください。
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コーヒー豆の品種(アラビカ種・ロブスタ種・リベリカ種等)とは何か?徹底解説!
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コーヒー豆の等級と格付け
グアテマラでは生産地の標高によって格付けされ、標高が高いほど品質の高いコーヒー豆として評価されます。
等級は、次の7つに分類されます。
- SHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)--- 標高1350m以上
- HB(ハード・ビーン)--- 標高1200~1350m
- SH(セミ・ハード・ビーン) --- 標高1050~1200m
- EPW(エクストラ・プライム・ウォッシュド) --- 標高900~1050m
- PW(プライム・ウォッシュド)--- 標高750~900m
- EGW(エクストラ・グッド・ウォッシュド)--- 標高600~750m
- GW(グッド・ウォッシュド)--- 標高600m以下
けっこう細かく分けるんですね。
等級と格付け方法についての詳しい記事は、こちらを参考にしてください。
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コーヒー豆の等級(グレード)と格付け方法を生産国別に解説します!
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代表的なコーヒー豆・農園
グアテマラで生産されている数多くのコーヒー豆の中から、いくつか代表的なものをご紹介します。
サンタカタリーナ農園
アンティグア地区でも特に標高の高い場所にあるサンタカタリーナ農園は、2007年にAPCA(アンティグア生産者組合)のコンテストで優勝したこともある優良な農園です。
この農園では、伝統的な製法を守りながらも、設備を充実させ品質管理を徹底しています。
標高の高さや品種の違いもふまえて区画ごとに栽培の管理を行い、完熟した実だけを手摘みで丁寧に収穫します。
選別では機械だけでなく手によるハンドピックも行うことで、欠点豆を徹底的に取り除いているんですよ。
コーヒー豆の品質を高めるために、手間ひまを惜しみません。
風味の特徴としては、柑橘系の華やかな酸味に、しっかりしたコクと甘味があります。
バランスがとれていて飲みやすいコーヒーです。
エル・インヘント農園 パカマラ
ウエウエテナンゴ地区にあるエル・インヘント農園は、2008年以降COE(カップ・オブ・エクセレンス)で何度も優勝している世界的に有名な農園です。
この農園では、もともとエルサルバドルで開発された品種で、マラゴジッペとパカスの人工交配種の「パカマラ」という品種のコーヒー豆を栽培しています。
コーヒーの実は熟したら手摘みで収穫し、自前でかまえた精製所で、山からのきれいな水を利用したウォッシュド式の精製処理を行っています。
長い時間をかけてしっかりと天日乾燥させることで、風味の豊かなコーヒー豆に仕上げます。
美味しいコーヒー豆を作るために日々研究に励み、品質管理にも余念がありません。
この農園で作られるコーヒー豆は、香りがとても複雑で豊かなのが特徴です。
トロピカルフルーツのような豊かな香りも感じれば、バラのようなフローラルな香りも感じます。
雑味がなく、酸味には透明感があります。
まとめ
この記事では、グアテマラ産のコーヒー豆の特徴についてみてきました。
火山がたくさんあって土壌も豊かで、地形や気候にも恵まれているグアテマラのコーヒー豆は、品質が高いことで知られています。
国土はそれほど広くなく限られていますが、研究を重ねてもらって、もっともっと美味しいコーヒー豆をたくさん世に生み出してほしいですね♪