「コーヒー」と聞いて真っ先に思い浮かべる国といえば、ブラジルですよね?
実際のところ、ブラジルはコーヒーとどれくらい関わりの深い国なのでしょうか?
この記事では、ブラジルにおけるコーヒーの位置づけとその特徴について、解説します。
ブラジルの基礎情報
- 国名:ブラジル連邦共和国
- 首都:ブラジリア
- 人口:約2億947万人
- 言語:ポルトガル語
- 面積:約851.2万㎢(日本の22倍以上の面積)
ブラジルはコーヒー豆の生産量・輸出量ともに断トツの世界第1位で、世界最大のコーヒー大国として君臨し続けています。
ブラジルの生産量は世界の3割以上も占めるため、その年ブラジルで収穫されたコーヒー豆が豊作か不作か、出来が良いか悪いかが、世界のコーヒー市場に大きな影響を及ぼします。
さらにコーヒーの国内消費量も今ではアメリカの次の世界第2位となっており、ブラジルで生産したコーヒー豆のおよそ半分が国内で消費されています。
また、日本のコーヒー豆輸入量はブラジル産が最も多く、全体のおよそ3分の1を占めています。
コーヒー生産の変遷
今からおよそ300年前の1727年、南米北東部に位置するフランス領ギアナから持ち込まれ、ブラジルでもコーヒーの生産が始まりました。
その後、ブラジルの気候と赤土の養分豊富な土壌がコーヒーの生産に向いていたため急激に広まり、19世紀半ばには世界最大のコーヒー豆生産国にまで登りつめました。
そして、1920年には全世界の8割のコーヒー豆を生産するほどに!
その後諸外国での生産量の伸びもあって比率としては徐々に下がってはいるものの、今なお3割をキープしているんですからスゴイことですよね!
ブラジルの主なコーヒー生産地としては東南部が中心で、リオデジャネイロからサンパウロ州、パラナ州へと生産の中心地は移っていきました。
1960年代になると、南部に位置するパラナ州の生産量が国内生産量の6割を占めるまでになります。
ところが、もともとコーヒーの天敵である霜の被害を受けることが多かったパラナ州は、1975年に霜による甚大な被害をこうむってしまいます。
それをきっかけにミナス・ジェライス州へコーヒーの中心地が移り、今や国内生産量の半分を占めるブラジル最大のコーヒー生産地へと成長しました。
それはなんと世界第2位のベトナムの生産量にも迫る勢いです!
ミナス・ジェライス州の中でも特にセラード地区は、平地が多いため機械での収穫がしやすく灌漑設備も整っている大規模農園が多いことから、生産量を増やすことに成功しています。
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コーヒー豆の生産方法
ブラジルが長い間コーヒー豆生産量世界第1位をキープできている背景には、世界第5位の広大な国土の存在があります。
この広い土地を活用してたくさんの大規模農園ができ、その多くが収穫するのに機械を使っています。
機械が使えないような場所では、枝についている実を手で一気にしごき取る「ストリッピング」という方法で収穫します。
本来、高い品質のコーヒー豆にするためには成熟したものだけを手摘みで収穫するのがベストですが、広大な農園ではそうもしていられません。
もたもたしているとあっという間に熟しすぎてしまうので、効率優先。
機械やストリッピングで収穫すると、葉っぱや小枝のような異物や未熟な実、完熟しすぎた実などが混ざってしまうので、収穫した後にある程度の選別作業が必要になります。
ただ、昨今のスペシャルティコーヒーの台頭によって、効率より質を重視する農園も出てきていて、一つ一つ丁寧に手摘みで収穫しているところもあります。
収穫時期は5~9月です。
収穫後の精製方法としては、これまで作業工程がシンプルなナチュラルを採用しているところが大半でした。
最近では、パルプドナチュラルを採用するところも増えてきています。
精製方法についての詳しい記事はこちらを参考にしてください。
-
コーヒーチェリーから生豆を取り出す4つの精製方法を解説します!
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コーヒー豆の栽培品種
ブラジルでは農地が広大なこともあり、さまざまな種類の品種を栽培しています。
大きな分類でいえば、アラビカ種が8割、ロブスタ種が2割。
アラビカ種では、ブルボンや、ムンドノーボ、カトゥアイ、イカトゥ、マラゴジッペなど。
ロブスタ種ではコロニンが栽培されています。
品種についての詳しい記事はこちらを参考にしてください。
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コーヒー豆の品種(アラビカ種・ロブスタ種・リベリカ種等)とは何か?徹底解説!
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コーヒー豆の等級と格付け
ブラジルでの等級は、欠点数、スクリーンサイズ、カップの3つの指標で格付けされています。
欠点数とは、生豆300gの中にどのくらい欠点豆や異物が混入していたかを点数化したもので、点数が低いほど等級は高くなります。
スクリーンサイズとは生豆の大きさのことで、大きいほど評価は上がります。
カップとはコーヒー液にしたときの味のことで、異臭や刺激の低いなめらかな味わいであるほど評価は上がります。
格付けに応じて、コーヒー豆は「生産国 + 欠点数の等級 + スクリーンサイズ + カップ」といったように表記されます。
例えば「ブラジル No.2 スクリーン19 ソフト」といった感じです。
ブラジルの等級と格付け方法についての詳しい記事は、こちらを参考にしてください。
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コーヒー豆の等級(グレード)と格付け方法を生産国別に解説します!
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コーヒーの味の特徴
比較的標高が低いところで生産していることや、ナチュラルで精製されているものが多いことから、酸味は控えめで、ほどよい苦味とコクがあります。
クセがないので飲みやすく、マイルドでバランスのとれた味わいなので、ブレンドのベースとしても重宝されています。
代表的なコーヒー豆・農園
ブラジルで生産されている数多くのコーヒー豆の中から、いくつか代表的なものをご紹介します。
ブラジル・サントスNo.2
ブラジルで最も代表的な豆の一つで、ブラジルのコーヒーの定番ともいえる豆です。
価格も比較的お手頃で手に入りやすく、日本でも口にする機会が多いです。
「サントス」というのは、ブラジル東南部にあるブラジル最大の貿易港で、ここからコーヒー豆が積みだされ輸出されています。
コーヒー豆に、その積出港の名前が付けられているんですね。
また「No.2」というのは欠点数の等級を表していて、最も欠点数の少ない等級が「No.2」です。(No.1という等級はありません)
風味としては、香りが豊かで、酸味や苦味がほどよくやわらかです。
ストレートで飲むのもいいですが、バランスのとれたスタンダードな風味を活かしてブレンドのベースにもよく使われます。
アイスコーヒーにするとサッパリした味になって、また違った楽しみ方ができますよ。
ミディアムロースト~シティローストの中煎りで焙煎するのがおすすめです。
ブラジル・セルトン
国内最大のコーヒー生産地となったミナス・ジェライス州。
そのミナス・ジェライス州のカルモ・デ・ミナス地区にあるセルトン農園のコーヒー豆です。
カルモ・デ・ミナス地区は標高の高い山岳地帯で、適度な寒暖差と肥えた土壌に十分な降水量といった環境は、質の高いコーヒー豆を作るのにもってこいでした。
セルトン農園は、カルモ・デ・ミナス地区で最初にコーヒー栽培を始めただけでなく、その地区でいくつかの農園を経営している「セルトングループ」の発祥ともいえる農園なんです。
カルモ・デ・ミナス地区が優良なコーヒー生産地として有名になったのも、セルトングループに属する農園がブラジルCOE(カップ・オブ・エクセレンス)などの品評会で何度も受賞したことが大きいんですよ。
栽培している品種には、イエロー・ブルボンやレッド・ブルボンなどがあります。
風味の特徴としては、まろやかな口当たりで、きめの細かい上質な甘味があります。
ヘーゼルナッツやチョコレートとアプリコットのようなフルーツ系の風味を感じます。
マカウバ・デ・シーマ農園
ミナス・ジェライス州のセラード地区でも有数の農園のコーヒー豆です。
この農園では、品質の高いコーヒー豆を作るために、灌漑設備や収穫方法を見直すなど改良に取り組んでいます。
品種はムンドノーボがメインでしたが、最近ではブルボンも栽培しています。
また、樹上で実ったままの状態でコーヒーの実を完熟させ、レーズンのように真っ黒になるまで乾燥させてから収穫した豆、いわゆる「ボイア」も取り扱っています。
風味の特徴としては、酸味が少なく甘い香りとチョコレートやナッツ系のコクが感じられます。
クリーンでマイルドな味わいのコーヒーです。
ノヴァウニオン農園 オバタン
サンパウロ州モジアナ地区にある農園の豆です。
農園の規模は小さいながらも、2016年のサンパウロ州カッピングコンテストで優勝した実績をもっています。
この農園では、新しい品種で「オバタン」という生産量の少ない希少な豆を栽培しています。
現地の言葉で「VERY GOOD」を意味する「オバタン」は、ビジャサルチ、ハイブリッドティモール、カトゥアイをかけ合わせて作られた品種です。
風味の特徴としては、柑橘系の酸味と独特の甘み、ナッツ系の風味を感じます。
まとめ
この記事では、ブラジル産のコーヒー豆の特徴についてみてきました。
今後もまだ当分、ブラジルが「世界最大のコーヒー大国」の地位をキープしていきそうですね。
日本にとってもブラジルは最大のコーヒー豆輸入国ですし、これからもブラジルの動向には目が離せません!