『コピ・ルアク』というコーヒー豆を知っていますか?
とても希少で高価なことで知られているコーヒー豆で、100gが4,000円以上します。
なぜ希少かといえば、ジャコウネコという動物の”糞”から採れる珍しいコーヒー豆なんです!
初めて聞くと「ギョッ!!」としますけどね・・・。
この記事では、そんな『コピ・ルアク』について詳しく解説します。
コピ・ルアクができるまで
『コピ・ルアク』は、インドネシアで作られているコーヒー豆です。
インドネシアの現地語で、『コピ・ルアク』は『ジャコウネコのコーヒー』という意味です。
それぞれ『コピ』が『コーヒー』、『ルアク』が『ジャコウネコ』を意味しているんです。
では、このジャコウネコのコーヒー『コピ・ルアク』がどのように作られるか見ていきましょう。
- ジャコウネコがコーヒーの実を食べる
- ジャコウネコが糞として種の部分を排泄する
- その種を採取する
- 採取した種をよく洗って、乾燥、脱穀する
ジャコウネコは、日本に生息している動物でいうとハクビシンと近い分類になる動物です。
分類は違いますが、見た目はイタチやタヌキにも似ています。
名前に『ネコ』とついてはいますが、分類も見た目もそれほどネコに近くありません。
そんなジャコウネコは、コーヒーの実が大好物。
しかも、コーヒーの実の中でもおいしく熟したものだけを選んで食べるんです。
コーヒーの実の収穫にあたっては熟したものだけを収穫するのが理想であり、高品質なコーヒー豆になる基本です。
なので、ジャコウネコが熟したコーヒーの実だけを食べてくれるのは願ったり叶ったり、というわけです。
また、動物に果実を食べてもらって繁殖していく植物は、基本的に種は消化されずに排出されるようになってますよね。
ジャコウネコに食べられたコーヒーの実もそれと同じで、果肉の部分は消化されてしまいますが種の部分は糞として排泄されるんです。
しかも、コーヒー豆になる種の部分の外側にある硬い皮、いわゆる『パーチメント』がついた状態で排泄されます。
この『パーチメント』は脱穀して取り除かれてコーヒー豆になるので、気持ち的には「糞と触れていない部分を食している」と思うこともできるかも…。
とはいえ、動物が排泄した糞の中のものを口の中に入れるかと思うと、ちょっと抵抗ありますね。
こうして作られる『コピ・ルアク』は、考えようによっては、本来なら人の手や機械で行うコーヒーの実の収穫や果肉の除去といった精製工程の一部を、ジャコウネコが代わりにやってくれているとも言えます。
その一方で、ジャコウネコに依存する部分が大きいことや、手作業で行う工程が増え手間がかかることから、生産量を増やすことが容易ではありません。
そのため、とても希少なコーヒー豆として高価格で取り引きされています。
コピ・ルアクのはじまり
ところで、そもそも動物が排泄する糞からコーヒー豆を採ろうとしたきっかけは何だったんでしょう?
普通だったら、そんな発想になかなかならないですよね。
その背景を知るためには、インドネシアの植民地時代にまでさかのぼります。
もともとインドネシアにコーヒーの木はなく、当時植民地として支配されていたオランダによって持ち込まれ栽培されるようになりました。
もちろん、植民地にされている側なので、オランダがインドネシアの人々のことを考えてコーヒーの木を持ち込んでくれたわけではありません。
インドネシアの人々に安い賃金で強制的にコーヒーを栽培させ、収穫されたコーヒー豆は安い値段で買い取って利益を得ようとしたんです。
オランダがとった植民地政策のひとつで、いわゆる『強制栽培制度』というものです。
そんな状況の下、奴隷状態でこき使われていたインドネシアの人々も、自分たちが作っているコーヒーをなんとか飲んでみたいと思ったのでしょう。
ジャコウネコがコーヒーの実を食べることに目をつけ、ジャコウネコの糞からコーヒーの種を取り出してコッソリ飲んでみたのが始まりといわれています。
私はそこまでの極限状態に陥ったことがないので、この説明をされても「なるほど~、そりゃそうなるよね」とはちょっとなりませんけどね...。
コーヒーでそこまでお腹は膨れませんし、どうせならもっとお腹に溜まるものにリスクを取りたいかな。
コピ・ルアクの味
肝心の『コピ・ルアク』の味は、どういったものなのでしょうか。
『コピ・ルアク』は、コーヒーの実がジャコウネコの体内を通っているという変わった工程を経ていることもあって、他のコーヒーとは違った味わいになっています。
というのも、ジャコウネコの腸内にいる消化酵素や細菌によって発酵されることで、独特の風味が生まれると考えられているんです。
苦味や酸味が少なく、独特の甘い香りと複雑な味わいが特徴として挙げられます。
ただ、ジャコウネコが食べたコーヒーの実自体の種類や出来などにも影響を受けるので、同じ『コピ・ルアク』でも味にバラつきがあってなかなか一概には言えません。
ちなみに、糞を連想させるような香りや味は全くしませんので、安心(?)してくださいね。
コピ・ルアクの飲み方
いつものコーヒーの淹れ方でもいいですが、『コピ・ルアク』はインドネシアのコーヒー豆なので、せっかくですからインドネシア式の飲み方をしてみてはいかがでしょうか。
実はコーヒーの飲み方って、国によってけっこう違いがあるものなんです。
インドネシアの場合はどのようにしてコーヒーを飲んでいるかというと、フィルターを使わないいたってシンプルな飲み方です。
- コーヒー豆はインスタントコーヒー並みの極細挽きの粉にする
- コーヒーの粉を大さじ2杯(10g)ほどカップに入れる
- (砂糖をコーヒーの粉と同量程度カップに入れる)
- お湯を150㏄ほどカップに注ぎ、よくかき混ぜる
- コーヒーの粉がカップの底に沈むのをしばらく待つ
- 沈殿したコーヒーの粉が浮いてこないように気をつけながら、上の澄んだ部分を飲む
コーヒーの粉や砂糖、お湯の量は目安ですので、お好みで調整してくださいね。
インドネシア式では砂糖をかなりの量入れますが、せっかく珍しいコーヒー豆が手に入ったんですから、砂糖は元々の『コピ・ルアク』の味を味わってから必要に応じて入れたほうがいいでしょう。
コーヒーの粉が粗いと沈殿するまでにとても時間がかかってしまうので、できる限り細かい粉末状になるまで挽いてくださいね。
極細挽きに対応していないミルもあるので、できれば対応しているものを使いましょう。
コーヒー豆を現地の飲み方で飲むと、少しは現地で飲んでいるような感覚に近づけるかもしれませんよ。
コピ・ルアクが有名になった経緯
数十年前までは、「コーヒーに詳しい人なら知ってるかな」というくらいのコーヒーだった『コピ・ルアク』。
そんな『コピ・ルアク』の大きな転機は、1995年のイグノーベル賞での栄養学賞受賞でした。
1991年に創設されたイグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディ版で「人々を笑わせ考えさせる研究」に対して与えられる賞です。
この受賞により知名度がグンと上がり、広く知られるようになりました。
さらに、2006年に日本で上映された『かもめ食堂』や2007年のハリウッド映画『最高の人生の見つけ方』などといった映画に立て続けに取り上げられ、話題になりました。
ついこの前にやっていた映画だと思っていましたが、10年以上前の作品ですね(笑)
観たことがなければ、いい映画なので是非観てみてください♪
知名度が上がって有名になると良い面もあれば、悪い面も出てくるものです。
『コピ・ルアク』は高く売れるため、狭い檻にジャコウネコを閉じ込めてコーヒーの実をムリやり食べさせる動物虐待ともとれるようなことをする業者がではじめ、後をたちません。
こうした問題は、たびたびマスコミに取り上げられたりして社会問題になっているんです。
動物が生産過程の中で絡むケースでは、得てしてこういった問題って出てきますよね。
コピ・ルアクの類似商品
『コピ・ルアク』に注目が集まるにつれ、それに便乗するかのように、さまざまな動物にコーヒーの実を食べさせて作るコーヒー豆が登場しています。
例えば、次のようなものです。
名称 | 生産国 | 種類 |
ジャク―コーヒー | ブラジル | ジャク―という鳥の糞から採ったコーヒー豆 |
モンキーコーヒー | インド | サルの糞から採ったコーヒー豆 |
ブラックアイボリー | タイ | ゾウの糞から採ったコーヒー豆 |
これらのコーヒー豆は、基本的に『コピ・ルアク』と同じような工程で作られていて、やはりたくさん生産できないため高値で取引されています。
こうした『コピ・ルアク』の類似品が実際のところ味はどうなのか、興味があれば試しに買って自分の舌で確かめてみてください。
値段は高いですが、なかには、ネットなどを通じて買うことができるものもありますよ。
まとめ
この記事では、インドネシアの高級なコーヒー豆『コピ・ルアク』についてみてきました。
動物の糞から採れたものが高く売れるって、なんだか不思議ですよね。
そこまで抵抗がないようであれば、怖いもの見たさじゃないですけど一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
実際に味わってみて、その味に対して高い値段を払う価値があるか見極めましょう。
結局のところ、他の人がそのコーヒー豆をどう評価しようと自分が好きかどうかが肝心ですからね♪