果物の入った箱の側面に「優」とか「秀」といった表記が書いてありますよね。
あれって果物の「等級」を表しているんです。
等級とは品質のことで、形、色、味などを格付けしたもの。(ちなみに「階級」は果物の大きさを格付けしたものです)
果物と同じように、コーヒー豆にも「等級」があるんですよ。
格付けはコーヒー豆の品質の目安になります。
しかし、コーヒー豆の「等級」を決める基準や表記は世界共通ではなく、生産国によってバラバラ。
そこでこの記事では、
コーヒー豆の等級の格付けの見方や国ごとの違いについて詳しく解説します!
コーヒー豆の格付け(グレーディング)の方法
生産国はコーヒー豆を輸出するにあたって、コーヒー豆の品質を評価して各等級ごとに振り分けます。
これがコーヒー豆の格付けです。
「等級」は「グレード」とも呼ばれることから、「格付け」は「グレーディング」とも呼ばれています。
コーヒー豆は格付けされ、一定の基準をクリアした物でないと輸出されません。
等級が世界で統一されていないように、格付けに使われる指標もその国や地域の事情によってまちまちです。
格付けの際に重要視される指標は、大きく分けて3つあります。
- 産地の標高
- スクリーンサイズ(コーヒー豆の大きさ)
- 欠点数
生産国はこのうち1つ~複数の指標を組み合わせてコーヒー豆に格付けをしています。
国によっては「カップ(味)」や「豆の重さ」などを格付けの指標に使っていることもありますよ。
ただ、格付けに味の評価を含めているのはブラジルくらいで、他の国々は特に考慮していません。
味は国や人によって好みが違うので、あえて生産国としての品質評価には含めないようにしているんです。
そのため、多くの生産国で採用されている3つが格付けの指標になります。
次にそれぞれの指標の評価の考え方を見ていきましょう。
産地の標高
「コーヒー豆は産地の標高が高ければ高いほど品質が高い」と評価されます。
標高が高い高地は、昼夜の寒暖差が大きく、時間をかけてゆっくり実が熟していくので風味が豊かになるんですよ。
標高の高さを等級の基準に採用しているのは、グアテマラ、メキシコ、エルサルバドル、ホンジュラスといった中米の国々。
中米の国々は、山岳地帯の斜面でコーヒー豆を作っていることが多いので、標高が一番分かりやすい基準になるんですね。
スクリーンサイズ(コーヒー豆の大きさ)
「コーヒー豆の粒が大きければ大きいほど品質が高い」と評価されます。
コーヒー豆の大きさで振り分ける道具として使われるのが、「スクリーン」という穴の開いた鉄板状のふるい。ザルのような物です。
スクリーンの穴の大きさを「スクリーンサイズ」あるいは「スクリーンナンバー」と呼び、この値が大きいほどコーヒー豆が大きいことを意味します。
穴の大きさを表す単位は64分の1インチ(1インチ=25.4㎜)。
例えば、スクリーンサイズ『20』は64分の20インチ(約8mm)で、穴の大きさが約8mmのスクリーンを通らないサイズのコーヒー豆という意味になります。
スクリーンサイズを等級の基準に採用しているのは、コロンビア、ケニア、タンザニアといった国々です。
欠点数
「異物や欠点豆の混入率が低ければ低いほど品質が高い」と評価されます。
サンプルとして取り出したコーヒー豆300gの中に、混入している異物や欠点豆がどのくらいあるかを点数で表したのが欠点数。
混入している物の種類ごとに点数が設定されているため、単純に混入物の数だけでなく種類も欠点数に影響します。
例えば、黒豆の場合は1個につき欠点数「1」、未熟豆の場合は1個につき欠点数「0.2」といった具合です。
つまり、欠点数が低い方が品質が高いというわけですね。
点数のつけ方は生産国によって異なります。
欠点数を等級の基準に採用しているのは、エチオピア、インドネシア、ジャマイカといった国々です。
生産地ごとの等級(グレード)について
最初にも触れたように、国によって格付け方法も違えば、等級の設定方法も違います。
それぞれの生産地ではどんな格付け方法を採用して、どのように等級を設定しているのか、国ごとに見ていきましょう。
グアテマラ
標高で格付けしています。
一番高い等級は「SHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)」で、「グアテマラSHB」と表記されます。
等級 | 正式名称 | 標高 |
SHB | ストリクトリー・ハード・ビーン | 1350m以上 |
HB | ハード・ビーン | 1200~1350m |
SH | セミ・ハード・ビーン | 1050~1200m |
EPW | エクストラ・プライム・ウォッシュド | 900~1050m |
PW | プライム・ウォッシュド | 750~900m |
EGW | エクストラ・グッド・ウォッシュド | 600~750m |
GW | グッド・ウォッシュド | 600m以下 |
メキシコ
標高で格付けしています。
等級 | 正式名称 | 標高 |
SHG | ストリクトリー・ハイ・グロウン | 1700m以上 |
HG | ハイ・グロウン(アルトゥーラ) | 1000~1600m |
PW | プライム・ウォッシュド(スタンダード) | 700~1000m |
エルサルバドル
標高で格付けしています。
等級 | 正式名称 | 標高 |
SHG | ストリクトリー・ハイ・グロウン | 1200m以上 |
HG | ハイ・グロウン | 900~1200m |
CS | セントラル・スタンダード | 450~900m |
ホンジュラス
標高で格付けしています。
等級 | 正式名称 | 標高 |
SHG | ストリクトリー・ハイ・グロウン | 1200m以上 |
HG | ハイ・グロウン | 900~1200m |
CS | セントラル・スタンダード | 600~900m |
コロンビア
スクリーンサイズで格付けしています。
スクリーンサイズが14未満の豆は輸出されず、コロンビア国内で消費されています。
等級 | スクリーンサイズ |
スプレモ | 17(6.75mm)以上 |
エクセルソ | 14(5.5mm)~16(6.5mm) |
ケニア
スクリーンサイズと豆の重さで格付けしています。
等級 | 基準 |
AA | 7.2mm以上の大きい豆。 |
AB | 6.8mm以上の豆「A」と6.2mm以上の豆「B」が混ざったもの。 |
C | 6.2mm以上の豆「B」より小さい豆。 |
TT | 「AA」「AB」など他のグレードの豆のうち、風圧で選り分けられた軽い豆。 |
T | 最小・最細の豆。欠点豆。 |
E | エレファント。最大サイズの希少な豆で、やや大味。 |
PB | ピーベリー。コーヒーの実には種子が2粒あるはずのところが1粒しかない丸豆。 |
タンザニア
スクリーンサイズと豆の重さで格付けしています。
等級 | 基準 |
AA | スクリーンサイズ 6.75mm以上 |
A | スクリーンサイズ 6.25~6.75mm |
B | スクリーンサイズ 6.15~6.25mm |
C | スクリーンサイズ 5.9~6.15mm |
AF | 「AA」「A」のスクリーンサイズの豆のうち軽い豆 |
TT | 「B」のスクリーンサイズの豆のうち軽い豆 |
F | 「AF」「TT」の豆の中でもさらに軽い豆 |
エチオピア
欠点数で格付けしています。
8段階ある等級のうち、輸出対象となる基準は「グレード5」以上と定められています。
実際に輸出している豆の多くは、精製方法がウォッシュドの場合は「グレード2」まで、ナチュラルの場合は「グレード4」までです。
等級 | 欠点数 |
グレード1(G1) | 0~3 |
グレード2(G2) | 4~12 |
グレード3(G3) | 13~25 |
グレード4(G4) | 26~46 |
グレード5(G5) | 47~75 |
グレード6(G6) | 76~150 |
グレード7(G7) | 151~340 |
グレード8(G8) | 341以上 |
インドネシア(マンデリンの場合)
欠点数で格付けしています。
等級 | 欠点数 |
グレード1(G1) | 0~11 |
グレード2(G2) | 12~25 |
グレード3(G3) | 26~44 |
グレード4a(G4a) | 45~60 |
グレード4b(G4b) | 61~80 |
グレード5(G5) | 81~150 |
グレード6(G6) | 151~225 |
ジャマイカ(ブルーマウンテンの場合)
スクリーンサイズと欠点数で格付けしています。
一番高い等級は「ブルーマウンテンNo.1」と表記されます。
等級 | スクリーンサイズ | 欠点数/混入率 |
No.1 | 17~18(約6.75~7mm) | 最大2% |
No.2 | 16~17(約6.5~6.75mm) | 最大2% |
No.3 | 15~16(約6~6.5mm) | 最大2% |
トリエイジ(セレクト) | 15~18(約6~7mm) | 最大4% |
ピーベリー | 10以上 | 最大2% |
ブラジル
欠点数、スクリーンサイズ、カップ(味)の3つで格付けしています。
そのため「ブラジル No.2 スクリーン19 ソフト」といった感じで表記されます。長いですね…。
「No.2」が欠点数、「スクリーン19」がスクリーンサイズ、「ソフト」がカップの等級を指しています。
欠点数
下図の欠点数表を使って、混入していた欠点豆の種類と数で欠点数を計算し、No.2~No.8までの7段階の等級に分類します。
あえてNo.1は設けられていないので、書き間違いではありませんよ(笑)
No.6以上の豆だけが輸出されます。
等級 | 欠点数 |
No.2 | 0~4 |
No.3 | 5~8 |
No.4 | 9~26 |
No.5 | 27~46 |
No.6 | 47~86 |
No.7 | 87~160 |
No.8 | 161~360 |
【欠点数表】
混入物 | X個につき | 欠点数 |
石・木片・土(大) | 1個 | 5点 |
石・木片・土(中) | 1個 | 2点 |
石・木片・土(小) | 1個 | 1点 |
黒豆 | 1個 | 1点 |
パーチメント | 2個 | 1点 |
コーヒーの皮(大) | 1個 | 1点 |
コーヒーの皮(小) | 2~3個 | 1点 |
乾果 | 1個 | 1点 |
発酵豆 | 2個 | 1点 |
虫食い豆 | 2~5個 | 1点 |
未熟豆 | 5個 | 1点 |
貝殻豆 | 3個 | 1点 |
割れ豆・欠け豆 | 5個 | 1点 |
ふやけ豆・発育不全豆 | 5個 | 1点 |
スクリーンサイズ
スクリーンサイズは13から20までありますが、輸出されるのは16以上のサイズなので実質17~20の4段階となっています。
- スクリーンサイズ 20(8mm)
- スクリーンサイズ 19(7.5mm)
- スクリーンサイズ 18(7mm)
- スクリーンサイズ 17(6.75mm)
- スクリーンサイズ 16(6.5mm)
- スクリーンサイズ 15(6mm)
- スクリーンサイズ 14(5.5mm)
- スクリーンサイズ 13(5mm)
- ピーベリー
カップ(味)
コーヒー液にした時に異臭や刺激がないか、味わいはどうかをチェックします。
味の格付けは次のように分類されます。
等級 | 味 |
ストリクトリー・ソフト | なめらかな舌触りと甘みが十分にある。 |
ソフト | なめらかな舌触りと甘味がほどよくある。 |
ソフティッシュ | 甘味があまり感じられない。 |
ハード | 舌触りが悪く酸味や渋味などの刺激がある。 |
リオイ | 弱めのヨードホルム臭、薬品のような臭いがある。 |
リオ | 強めのヨードホルム臭、薬品のような臭いがある。 |
この分類に、さらに細かく間の段階を加えることもあります。
上質なものほど異味異臭がなくなめらかな舌触りで、低質なものほど薬品臭のような異臭がします。
「リオイ」や「リオ」のような低級品に薬品のような臭いがついてしまうのは収穫方法に原因があるんですよ。
ブラジルでは農園が広大なため手摘みではなく土の上に実を落として収穫するので、ブラジルの土壌独特の臭みであるヨード臭、いわゆるリオ臭がついてしまうんですね。
ただ、リオ臭を好まない日本やヨーロッパと違って、中東やトルコの一部地域のように昔から重宝している文化圏もあります。
まとめ
この記事では、コーヒー豆の等級と格付け方法について見てきました。
こういった知識が頭の片隅にあるだけでも、コーヒー豆を選ぶ際の参考になりますよね♪
あなたが飲んでいるコーヒーがどこの国のどういった等級のものかを少し気にしてみると、自分の好みを具体的に知ることもできますよ!
国によって指標は全然違うので、一回読んだだけで覚えるのは難しいと思います。
この記事をブックマークなどして、コーヒー豆を買う時に再チェックしてみてくださいね!